リスニングの壁を突き破る!挫折しないディクテーションのやり方
リスニング力を上げるための英語学習法として、ディクテーションの効果はいたるところで耳にします。ただ本気で取りかかると非常に時間がかかるので、「ディクテーションは効果があるのはわかるけど続かない」と敬遠する人が多いのも事実です。
そんな根気を必要とするディクテーションですが、試してみる価値はあるのでしょうか?
結論から言うと、「聞こえた英語を1文字1文字書き取るトレーニング」であるディクテーションは、確実にリスニング力をアップさせたい人には必須の英語学習法です。
この記事では、これだけ知っていれば絶対に挫折しない!効果的なディクテーションのやり方や秘訣をご紹介します。
1. ディクテーションの鉄則:効果を感じるまで続けなければ意味がない
ディクテーションに限らず、音読でもシャドーイングでも、英語力を上げるためのトレーニングは続けることが何より大切です。「この方法は効果があると聞いたから」とちょっと試してはやめて次の新しい方法に乗り換える・・・これを繰り返しているといつまでたっても上達を感じることはできません。
このことは、特にディクテーションを始めようとしている人がしっかりと心に留めておかなければならないポイントです。というのも、ディクテーションは時間と根気を必要とする英語トレーニング法なので、効果を感じるまで続けられる人が圧倒的に少ないからです。
では、ディクテーションとは、どのくらい大変なトレーニングなのでしょうか?
「リスニング力をつけるためには1日8時間ディクテーションをするべし!」と断言するベテラン英語講師の言葉を聞いたことがあります。
1日8時間?・・・最初は耳を疑いましたが間違いありません。このベテラン講師は断言していました。この数字には、多くの生徒さんが大きな成果を挙げているという実績が伴っているのです。
ディクテーションといっても、一度書き取って間違いをチェックしたら終わり・・・ではありません。赤字で訂正した部分を意識しながら、再度挑戦する。何度もディクテーションするうちに訂正箇所がどんどん減ってくるので、赤字がなくなるまで徹底的に根気よく続ける。これがポイントです。
学習者のレベル、使う教材の長さや難易度にもよるので、8時間という数字は目安でしかありませんが、長めの英文を完璧に書き取れるまで繰り返し聞いて書き取る作業には、膨大な時間がかかることは容易に想像できると思います。
とはいえ、1文字1文字書き取ることができるようになれば、それはリスニングの観点からみると「100%の聞き取り」に成功したことになるのです。大変な作業でも、これを繰り返すことによってリスニング力がアップしないわけがありません。続けてさえいけば、誰にでもいつか必ず効果を実感できる日はやってきます。
つまり、リスニング力の伸び悩みに直面している人にとって、ディクテーションは試してみる価値のある英語学習法です。ただし「効果を感じるまで続けなければ意味がない」という鉄則を忘れてはいけません。
2. 効果を感じるまで、ディクテーションを続けるための秘訣とは?
2-1. 自分に最適なレベルと時間を見極める
どんなにやる気満々な人でも、最初から長くて難しそうな英語の音声をディクテーション教材に選ぶと、効果を実感する前に挫折してしまう可能性が極めて高いです。ましてや、ディクテーションに苦手意識がある方は、教材の選択には十分な注意が必要です。
リスニング力向上を目指して、細く長くディクテーションを続けていくためには、まずトライアルとして1分前後の短い音声、しかも自分の英語レベルよりも少し下のレベルからチャレンジしてみることをおすすめします。
どんなことでも最初から無理をせずに、負荷が大きすぎない簡単なことから始めて、徐々に手応えを感じるまで続けることが大切です。そうでないと、手応えを感じる前に「これはダメだ〜」と挫折してしまうことになるので、それではもったいないですよね。
最終的に大きな目標に達成するためには、最初は小さく始め、習慣化するにつれて負荷を大きくしていく方法が有効です。(自分に最適なレベルが見つかる、負荷の小さい短めの英語音声教材については、「4. 全レベル対応!これから始める30秒〜のディクテーション」を参考にしてみてください。)
2-2. なぜ、ディクテーションをするのか? その目的を忘れない
いまネットで検索すると、いろいろな英語教材や学習法が山のように紹介されています。でも実際に始めるとなると何からやるべきなのか、どの教材を使ったらよいのか、あるいはちょっとやってみたけど効果が感じられないとか、モンモンとしている方も多いと思います。
英語の目標を達成するためには、当たり前のことですが英語学習を継続することが大切。そして英語学習を継続させるためには、なぜこの教材をこういうやり方で使うのかという目的をしっかり理解して、効果を実感するまでモクモクと続ける姿勢が必要です。
すると、やがて効果を実感し始める → さらに学習意欲に拍車がかかってくる → どんどん英語レベルが上がってくる・・・そんな理想的な上昇サイクルを作り上げることが重要です。
特に、ディクテーションのように時間がかかるもの、根気が必要なものはなおさらです。ペダルが軽い自転車は最初からスイスイこぐことができますが、ペダルが重い自転車はスイスイ走り出すまでにちょっと時間がかかりますよね。最初の踏み込みにかかる負荷が大きいからです。
でも一旦回り出してしまえばこちらのもの。あとはペダルをこぎ続けさえすれば、(気持ち的にも)最小限の努力で最大限の効果を発揮することができます。
ディクテーションの目的は、聞いた英語を100%理解できるようになるため。この目的を忘れずに、たまには「聞く→書く」だけの基本トレーニングにとどまらず、書き取った英語を声に出して読んでみるなど、耳・手・目・口など身体と五感をフル活用するのが英語学習を楽しんで続けるためにコツです。
ディクテーションに挫折するのは、「なぜこれを始めたのか?」という目的をついつい忘れてしまい、聞いた英語を書き取るという作業そのものが目的となってしまうからです。そんな苦行に陥らないように、「聞いた英語を100%理解できる」自分を想像しながら、少しずつディクテーションを習慣化させていきましょう。
3. 効果的なディクテーションのやり方
以前、こちらの記事(「聞き流し」は効果なし!? 英語がスイスイ頭に入る「2つの聞き方」とは?)で、リスニングを向上させるためには、多聴(大まかな内容をつかむ聞き方)と精聴(多聴で聞き取れなかった細かい点も全て理解するための聞き方)をバランス良く組み合わせることが大切だとお話しました。
ディクテーションは、この細かい点まで聞き取る精聴のステップに取り入れることもできます。1回めで聞き取れなかった部分を繰り返し聞いて書き取ろうとすることで、拾える音が増えてくるからです。では、具体的なやり方をみていきましょう。
3-1. 具体的な手順
- 英文トランスクリプトのある音声教材を準備する
- 大まかな内容をつかむつもりで流れを追いながら、何も見ずにひと通り聞いてみる
- トランスクリプトは見ずに音声に集中し、聞こえた音を1文字1文字書き取る(知らない単語が出てきた場合は、カタカナでも良いので聞き取った音を文字にしてみる)
- 時間が許す限り、何度も音声を聞いて、3の書き取り作業を繰り返す
- これ以上は無理と思った時点でトランスクリプトを見て、間違いや抜けている部分を赤字で修正・追加する
- 続けて(または後日)、同じ音声教材を使って1からディクテーションを再度行い、トランスクリプトで答え合わせをする(1回めよりも訂正の赤字は少なくなっているはず)
- 理想的には、赤字で訂正する必要がなくなるまで、同じ教材のディクテーションを繰り返す
基本的には「聞いた英語を書き取る」だけの単純なトレーニングなのですが、100%聞き取れる(=書き取れる)ようになるまで相当な根気が必要です。
3-2. リスニングの弱点をあぶり出す
少し慣れてきたら、聞き取れなかった箇所について、なぜ聞き取れなかったのか?・・・その原因を探ってみることも大切です。そうすることによって、自分のリスニングの弱点を浮き彫りにすることができます。
例えば・・・
- 音と音がつながっている部分が聞き取れなかったのか?
- 音の強弱がある中で、弱く発音されている部分が聞き取れなかったのか?
- 知らない単語が出てきたのか?
- スピードについていかれなかったのか?
などなど、分析結果にもとづいて、自分の弱点を補強していきましょう。
例えば、弱く発音されている音が聞き取れなかったとしても、文法知識があれば、その部分を推測して補うことは可能です。I know ( ) you meanという英語を聞いて、( )内の弱く発音された音が聞き取れなかったとしても、文法知識があれば( )にはwhatが入るな・・・と推測することができます。この場合は、文法を強化することが1つの対策となりますね。
また、知らない単語が多ければ多いほど、英語を聞いても書き取れる部分は少なくなります。知らないものは聞こえないわけですから。この場合は、語彙力を補強することが弱点克服への第一歩になります。
その他にも、英語の音の特徴(弱く発音される、隣同士がつながって聞こえる、音が脱落するなど)が聞き取りの妨げとなる場合もあります(この点について詳しくは、また後日別の記事でまとめたいと思います)。
要するに、ディクテーションをして聞き取れなった原因を分析することで、自分のリスニングの弱点があぶり出されるのです。そして、その弱点を補強すること(単語力や文法力を強化する、英語の音の特徴に慣れるなど)によって、総合的な英語力アップにつながります。
4. 全レベル対応!これから始める30秒〜のディクテーション
これまでみてきたように、ディクテーションは地道な作業の繰り返しです。そのため、高度なリスニング力をつけるのに効果的だとわかっていても、最初からがんばりすぎると途中で挫折する可能性が高いのです。まずは、5分でも10分でもスキマ時間を使って取り組み、毎日の習慣にしていくことが大切です。
ここでは、これからディクテーションを試してみたい方にも、これまで挫折続きでディクテーションが嫌いになってしまった方にも、新たな気持ちで取り組んでいただけるサイトをご紹介します。
News in Levels :World News for Students of English
ポイントは、「2-1. 自分に最適なレベルと時間を見極める」でご説明したように、自分の英語レベルよりも少し下のレベルの短い英文からスタートすること。
News in Levelsでは、同じタイトルのニュースがレベル別に3つ用意されています(Level 1, Level 2, Level 3)。もちろん、各ニュースは音声とテキストで構成されているので、聞き取れなかった箇所は文字で確認することができます。
しかも、1つのニュースが短いLevel 1では30秒ちょっとのものからあります。Level 2・3でも1分前後。これなら無理せず、自分のレベルに合わせて毎日ディクテーションに取り組むことができそうですね。効果を最速最大限に実感するためには、「毎日」というのがとても重要なのです。
5. まとめ
いかがでしたでしょうか?「リスニング力を上げるためにディクテーションが効果的だと言われているけど、どうやってやるのかわからない」「ディクテーションを試してみたけど、大変すぎて続かない」という方は、以下のポイントをしっかり押さえて、挫折知らずのディクテーションをぜひ英語学習に取り入れてみてください。
- ディクテーションは、効果を感じるまで続けなければ意味がない
- 自分の英語レベルよりも少し下のレベルの短い教材からはじめる
- なぜ、ディクテーションをするのか? その目的を忘れない
- 赤字で訂正する必要がなくなるまで、同じ教材のディクテーションを繰り返す
- 聞き取れなかった原因を分析し、弱点克服に役立てる
ディクテーションは、途中で挫折しない限り、コツコツ努力した分だけ大きな成果をもたらしてくれます。「なぜ、リスニング力が上がらないのだろう?」とリスニングの壁に直面している方は、ぜひこの記事を参考に、あまり負荷のかからない教材からスタートして、大きな効果を実感できるまで続ける習慣をつけてみてください。
千里の道も一歩から。「聞いた英語を100%理解する」という目標への道も、小さな一歩から始まります。