シャドーイングに挑戦!〜その効果と挫折しないための5つのステップ
効果的な英語上達法の1つとして、シャドーイングという言葉を聞いたことがある方もいると思います。私自身は、通訳学校で初めて体験したのですが、いまでは英語のトレーニング法として、シャドーイングを取り入れている学校も増えているようです。
実際、わが家の子どもが通う中学校の英語クラスでもシャドーイングをしているそうです。英語コーチングを受けてくださった中学校の英語の先生も、クラスで生徒さんたちにシャドーイングをしてもらっているとのこと。
シャドーイングとは、耳から聞こえてくる英語の音声の後に「影=シャドー」のようについていくこと、つまり聞こえてくる音声の後を追いながら、遅れをとらないように英語をリピートしていく学習法です。
この記事では、中学生も始めているシャドーイングとは、どんな英語習得法なのか? そして、英語を上達させる上でどんな効果があるのか?・・・を中心にご紹介していきます。
1. シャドーイングは、音読にならぶ強力な英語筋トレ
英語の上達には、単語や文法を覚えるお勉強的な側面と、音読やシャドーイングなど毎日のトレーニングを必要とするスポーツ的な側面があります。いくら文法をバッチリ覚えていても、単語をたくさん知っていても、それを瞬時に使いこなすことができなければ「使える英語」が身についているとは言えません。
英語がスムーズに口から出てくる感覚を身につけるために、英語学習にもスポーツと同じように「筋トレ」が必要であること、そして英語筋を鍛えるトレーニング法として「音読」が役立つことについては、こちらの記事→「英語音読の効果とは? 正しい5つの手順+レベル別おすすめ教材10選」でご紹介しました。
実は、シャドーイングにも音読と同じような「英語筋トレ」効果があります。特にシャドーイングは、英語の音声に耳を集中させながら、同時に英語を話す必要があることから、さらに大きなリスニング&スピーキング上達効果が期待できるのです。
2. シャドーイングの効果とは?
シャドーイングは、聞こえた英語をそのまま流れに乗ってリピートしていく学習法なので、トレーニング中はずっと英語をしゃべり続けていることになります。こうして英語のアウトプットを続けているうち、総合的な英語力が底上げされていきます。具体的には・・・
2-1. 日本語的な発音が矯正される
まず、シャドーイングでは、お手本となる英語の発音や間の取り方、そしてアクセントやイントネーションといった英語特有のリズムをそっくりそのままコピーして発話していくので、トレーニングを積めば積むほど、「日本語的な発音が矯正される」という効果があります。
お手本のマネをしていると言っても、実際に自分の口から発した英語は自分の言葉として定着し、英語がスラスラ口から出てくる感覚が身についてくるのです。
こうしたアウトプットの練習を繰り返すうちに、英語を話すことに対する抵抗がなくなり、自分の発音にも自信が持てるようになります。
2-2. 英語回路が構築される
基本的にシャドーイングでは、流れてくる英語の音声を途中でストップさせることはありません。ということは、英語の音声が聞こえてくる限り、それに合わせて英語を忠実にリピートし続けることになります。
リスニングの場合は、ただ聞いているだけでいいのですが、シャドーイングでは「聞きながら話す」ことをしなければなりません。かなり負荷の高いトレーニングですね。(同時通訳の場合は「英語で聞いて日本語で話す」、またはその逆の作業になるので、さらに負荷が高いことは想像できると思います。)
とはいえ、シャドーイングを続けることによって、「英語を英語の語順のままスラスラ理解できる力」が大幅にアップします。というより、そもそも英語を聞いた順に理解できなければ、とてもお手本の英語音声についていくことはできません。
慣れるまでにはある程度の時間がかかりますが、繰り返し学習することによって、全神経を集中させなくても、シャドーイングが楽にできるようになります。最初はわからなかった文の意味や構造なども理解しながらシャドーイングができるようになると、徐々に英語回路が構築されていきます。
さらにトレーニングを積んで英語回路が強化されてくると、「この文法間違ってないかな〜」といった言葉の規則に気を取られることが少なくなります。その分、「こんなことを伝えたい〜」というメッセージの内容に神経を向けることができるので、よりネイティブに近いコミュニケーション能力を身につけることができると言われています。
確かに、母国語である日本語を話すときには、文法など言葉の決まりはある程度自動的に判断できるので、そちらに意識を傾ける必要はないですよね。その分、「甘えた声を出して、欲しいものを買ってもらおう」とか「すごく怒ってるんだけど、怒りを爆発させるのではなく、さりげなく怒っていることを伝えよう」など、伝えたいことが効果的に伝わるような話し方をしようという余裕すら持てるわけです。
英語でもこんな状態に近づけたらいいですよね。シャドーイングには、そんな効果もあるのです。
2-3. スピーキング力はもちろん、リスニング力も上がる
シャドーイングは、実際に英語を口から出すアウトプットのトレーニングなので、やればやるほど英語をスラスラ話す感覚が身についてきます。英語を話すことに対する抵抗がなくなれば、当時にスピーキング力もついてきます。というのも「英語が話せない」という現象は思い込みであることが多く、「間違えたらいやだな」といった自信のなさが原因である場合が多いからです。
さらに、耳から聞こえてきた英語をリピートするので、そもそも耳に入ってくる英語を聞き取ることができなければ、シャドーイングは成り立ちません。英語が聞き取れない原因はいろいろあるのですが(詳しくは、「リスニング〜英語が聞き取れない原因を分析して、弱点をあぶりだす!」をご覧ください)、まず大前提として、自分が発音できない音は正確には聞き取れない・・・と言われています。
つまり、シャドーイングは効果的なやり方で続けていけば、「自分で発音できないから聞き取れない」「聞き取れないから発音できない」という2つの矛盾を一挙に解決できるトレーニング法だと言えそうです。
3. 効果的なシャドーイングのやり方:5つのステップ
シャドーイングって何となく効果がありそうだけど、「流れてくる英語の音声を聞きながら、それに合わせて忠実にリピートし続ける」なんてとても難しそう・・・英語を聞いて理解するだけでも大変なのに、リスニングをしながら同時にスピーキングをするなんて無理・・・と思った方もいるかもしれません。
冒頭でお話ししたように、いまやシャドーイングは中学校の英語の授業でも取り入られています。ということは、通訳学校だけで行われている高度なトレーニングなのではなく、効果的な手順でコツコツ取り組んでいけば、それなりの効果が十分期待できる学習法なのです。
まずは次のステップを踏みながら、段階的にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
- テキストを見ないで、英語の音声を何度か聞いてみる
- どうしても聞き取れない部分を中心に、テキストや辞書で、意味・構文・単語の発音などを確認する
- テキストを見ながら、英語の音声についてリピートする(テキストありシャドーイング)→ スラスラできるようになるまで繰り返す
- 今度はテキストを見ずに、英語の発音、リズム、イントネーション、アクセントなど、特に音声面に注意を向け、シャドーイングを行う)→ スラスラできるようになるまで繰り返す
- 同様にテキストを見ずに、英語の音声面だけでなく、文の意味内容も理解しながら、シャドーイングを行う → 意味を取りながらスラスラ英語をリピートできるようになるまで繰り返す
1〜5までしっかりステップを踏んで仕上げた教材は、完全に自分の英語の肥やしになっているはずです。そこに出てくる単語も表現も文法も構文もすべて身体に染み込み、それらを頭で理解しているだけでなく、全部「聞ける」「話せる」状態までマスターしたことになります。
このように1つ1つしっかりと教材を仕上げていくことで、徐々に自分の使える英語が蓄積されていきます。すると、英語を話すことに対する抵抗感がなくなり、むしろ英語を話すことが楽しくなって、総合的な英語力アップにつながるのですね。
4. シャドーイング教材を選ぶときの2つの注意点
ここまで見てきておわかりのように、シャドーイングは「聞きながら話す」というかなり負荷の高い英語トレーニング法です。なので、教材を選ぶときには気をつけておきたいポイントがあります。ひとことで言えば、自分の英語レベルに合った教材を選ぶということ。初めは、少し簡単かなと思える一つ下のレベルから始めるのが続けるコツですね。
具体的には、次の2つの点から判断していきましょう。
(1) テキストを読んだときの理解度:知らない単語や文法が多すぎないか?
読んでもすぐに理解できないテキストは、聞ける・話せるのレベルに到達するまでにかなりの忍耐力が必要になります。英語学習は続けることが何より大切なので、自分がおもしろいと思える内容で、ほどほどの負荷の教材を見極めてください。
(2) 英語音声のスピード
同じ英語のテキストでも、音声スピードによって難易度が変わってきます。ゆっくり話されている英語であれば、聞きながらリピートするにも余裕がありますが、そのスピードが上がるにつれて口がついていかなくなってしまいます。
スピーキングの上達を目指すのであれば、最終的にはナチュラルスピードを目標にしたいところですね。とはいえ、最初からナチュラルスピードは無理・・・という方でもあきらめる必要はありません。音声の再生スピードを変えられる便利なアプリを活用するという手があります。(詳しくは、「5-1. アプリを活用して英語音声の再生スピードを変える」を参考にしてください)
基本的には、テキストと英語音声が入手できるものであれば、シャドーイング教材として使うことができます。何を選んで良いのかまったくわからないという方は、こちらの記事でご紹介している「レベル別おすすめ音読教材」を参考にしてみてください。
音読でもシャドーイングでも、同じ素材をいろいろな角度から学習することで、知らなかった単語の意味を覚えたり、リスニング力をアップさせたり、さらにはスピーキングの予備練習ができたりと、総合的な英語力を磨くことができるのです。気に入った教材を使い回すのも、賢い英語学習者の知恵ですね。
5. シャドーイングの効果を倍増させる3つのアイデア
ちょっとした工夫で、シャドーイングの効果を倍増させることができます。私が実際に通訳学校でやってみて効果的だと感じたこと、また英語コーチングのクライアントさんの間で好評だったことなど、知っていると役に立つかもしれない3つのアイデアをご紹介します。
5-1. アプリを活用して英語音声の再生スピードを変える
【語学プレーヤー】
(詳しくはこちらをクリックしてください)
NHKのラジオ講座で英語学習をしている方もたくさんいらっしゃると思いますが、このアプリはラジオ講座の学習に使えるだけでなく、語学学習全般に役立つ便利な「話速変換」機能が付いています。英語音声の再生スピードを0.01%刻みで0.5〜3倍に調整可能。NHK出版の教材などアプリ内で販売している専用音声教材以外の音源も再生することができます。
【Audipo】
(詳しくはこちらをクリックしてください)
このアプリは、再生スピードを変えるだけでなく、簡単に音声の頭出しができます。例えば、長いスピーチのある部分だけを繰り返し聞きたい場合など、頭出ししたい部分をタップするだけで、いつでもそこから頭出しができます。
5-2. 録音して自己モニタリング
シャドーイングを毎日やっていても、上達しているのかどうかわからない・・・という声もよく耳にします。そんな方におすすめしているのが、自分の英語を録音して、それを自分でモニターすることです。
第三者の目線で、テキストと照らし合わせながら、自分の話す英語をチェックするだけで、たくさんの気づきがあるはずです。悪いところは直して、また録音→自己チェックをする。このサイクルを繰り返すうちに、もとの自分の英語がどんどん改良されていきます。自分の話す英語が上達している様子を録音を通して実感することで、自然に自信がついてくるものです。
5-3. イヤホン片方着用で英語に超集中
私もたまにシャドーイングをしますが、ハリキリすぎるせいか自分の声が大きすぎて、英語の音声がよく聞こえないこともあります。そんなときは、通訳学校でトレーニングを受けていたときにやっていた方法を使います。「自分の声が大きすぎて、もとの英語音声をジャマする現象」を改善する、とっておきの方法です。
シャドーイングをやったことのない方にはピンとこないかもしれませんが、続けてみるとわかりますよ。「あ〜、このことか」・・・と。
やり方は簡単。イヤホンを片方の耳だけにはめてシャドーイングをするだけ。そうすると、イヤホンをしている方の耳は流れてくる英語の音声に集中できます。一方、イヤホンをしていない方の耳は、自分が話す英語を聞くことに集中できるので、とてもやりやすいのです。これで、自分の声にジャマされて英語音声が聞きづらいという現象は解消されます。
どちらの耳にイヤホンをするかは、人それぞれ。両方試してみて、自分にやりやすい方を選ぶのが良いでしょう。ちなみに私は、電話は右の耳で聞きますが、シャドーイングをするときはイヤホンを左にして英語音声を聞いた方が収まりが良い気がしています。
6. まとめ
いかがでしたでしょうか?「いつかは英語がスラスラ話せるようになりたい」「スピーキング力アップにつながる、効果的な英語トレーニング法を知りたい」と思っている方には、ぜひシャドーイングを試してみることをおすすめします。次のポイントをしっかり押さえて、まず始める→続けるを目標にがんばってみてください。
- シャドーイングは、英語がスムーズに口から出てくる感覚が身につく効果的な英語習得法
- シャドーイングの効果①:日本語的な発音が矯正される
- シャドーイングの効果②:英語回路が構築される
- シャドーイングの効果③:スピーキング力はもちろん、リスニング力も上がる
- [テキストあり]シャドーイングから、[テキストなし]シャドーイングまで段階を踏んでトレーニングする
- シャドーイング教材は、テキストを読んだときの理解度と音声スピードを考慮して選ぶ
- 「英語の音声面」と「文の意味内容」をしっかりつかみながらトレーニングするのが成功のカギ
どんなレベルであっても、「読めばわかる英語」を「聞ける+話せる英語」に変えるために、シャドーイングは試してみる価値のある英語トレーニング法です。いかに楽しく続けられるか、教材選びも重要です。自分に興味のある内容のテキストとその英語音声があれば、迷わずシャドーイングをはじめてみましょう。1つの教材にしつこく食らいついていけば、やがて英語がスラスラ口から出てくる感覚が身についてくるはずです!